イオンは最近見ないけど、小さなスーパー行くと「棚卸につき20時に閉店させていただきます」って貼り紙があることもあるけど、この棚卸って何やるの?
基本的には在庫の確認と決算のために行うんだよ。
在庫って何もしないと帳簿とちょっとずつズレていってしまうから、そのズレを正すために行うんだよ。
スーパーマーケット等の小売店に行くとたまに「○月○日は棚卸のため、○時に閉店させていただきます。」というものを見たことありませんか?
この棚卸、何のためにするんだろう?と思ったり、棚卸の日はいつもより値引きシールの割引額が大きいな~思うこともありませんでしたか?
スーパーマーケット等の小売店が行う棚卸、どうして行うのか、どうして値引きシールの割引額が大きいのか、詳しく説明します。
棚卸とは?実在庫金額と帳簿在庫の違いを把握するため
棚卸とは、実際の在庫(商品数と金額)と帳簿上の在庫の違いを把握するために行います。
在庫は店の資産であるため、正確な在庫数・在庫金額を把握しないと決算を行うことが出来ないため、決算にあわせて行うのが一般的です。
棚卸(たなおろし)とも店卸(たなおろし)とも書く場合はありますが、同じ意味です。
そして在庫を確定して、店の資産・会社の資産を確定して税務報告に関する報告書・申請書を作ります。
つまり棚卸は決算に関する資料・報告書・申請書を作る上でも必ず必要になる作業となっています。
でも、今ならパソコン上で入荷を把握し、レジで販売数を突き合わせれば、棚卸なんて不要じゃないの?と思うかもしれませんが、そうはいかないのが小売業です。
お店の商品は行方不明になるし万引にもあう
小さい頃、スーパーに行ってどうしても欲しいお菓子やおもちゃを売場から持ってきて「買って~!!」と親の前で駄々をこねても買ってもらえず親に「返してきなさい!」って怒られたことはありませんか?
でもどうしても欲しくて、わかりにくいところに隠してしまった経験なんてありませんか?
店舗で働いていて、たまに棚の奥や隙間を掃除しているとお菓子が出てくるなんて経験があるので、きっと今でも隠してしまう小さなお子さんはいるのでしょう。
そういう子どもの悪気の無いイタズラや、悪気というよりは犯罪である万引により、商品は行方不明になったり盗まれて帳簿上の在庫数と実際の在庫数は、どんどんと違ってきてしまいます。
また食品売場で揚げ物とかお客さんが落としてしまった場合、捨てるしかありません。
また食器売場でお客さんが食器を落として割ってしまうこともあります。
この場合、伝票上の処理をしないといけませんが、忙しさのあまりついつい忘れてしまい、帳簿上の在庫数が実在庫数が変わってきてしまいます。
他にも試食を出したり、特売で販売価格を1割下げたのに帳簿上の金額を変更しなかったら、在庫金額・在庫数がどんどん差異が出てきてしまいます。
また特売金額で仕入れたけど特売が終わっても残った商品の値上げのための伝票上の処理を忘れてしまうなんてこともあります。
- 商品を隠されたりして帳簿在庫とズレていく
- 万引されて帳簿在庫とズレていく
- 販売できなくなった商品・廃棄商品の伝票上の処理を忘れる
- 試食分の商品の伝票上の処理を忘れる
- 特売で販売した商品の伝票上の処理を忘れる
他にも生鮮食品では歩留まり計算というもののミスをしてしまうこともあります。
生鮮食品の歩留まり計算の修正のためにも棚卸しは行う
肉の大きなブロックを仕入れた時、脂身が多くて捨てた分も考えて売価設定をしないといけないのに、その分を考慮せずに売価設定をしてしまうなんてこともあります。
これは歩留まり計算のミスと言うのですが、うっかりと間違えることはありますし、微妙なズレが出てきます。
1つ1つのズレは小さくてもこれが半期・1年となると大きな数字になっていきます。
このズレを把握するためにも行うのが棚卸です。
不良品の発見や古い商品の発見のためにも行う
会社によっては、不良品の発見や古い商品の発見のために行うこともあります。
年に1~2度は全商品をチェックすることで、不良品が混ざっていないか、極端に古い商品はないかという確認を行う訳です。
例えば食料品は常日頃から消費期限のチェックをしていますが、まれに気づかれずに消費期限が過ぎた商品が棚の奥に眠っているなんてことも…
そういう不良品や消費期限切れの商品の発見のためにも棚卸は行われています。
自動発注のためにも行う=サイクルカウント・スポットカウント
日保ちする調味料やスナック菓子など加工食品と呼ばれるカテゴリーやトイレットペーパーや洗剤などの日用消耗品は、大手スーパーマーケットであれば自動発注となっています。
自動発注とは一定の在庫数になったら自動的に発注がかかる仕組みです。
仮に残り商品数が10個になったら30個を自動で発注するというような感じです。電子マネーのオートチャージみたいな感じのものです。
ただ万引き等で商品数にズレが出てきてしまうと自動発注が正常に行われなくなります。
棚卸は、自動発注を正常に行うため正確な在庫数に修正するためにも行います。
ただし帳簿上の在庫と差異が大きくなった場合に特定のカテゴリー・範囲のみ在庫数を正確にするために棚卸のように商品在庫のカウントを行うことがあります。
これをサイクルカウントと言います。
ただしサイクルカウントには「循環棚卸」という意味合いもあって、スーパーによって意味合いが異なってくることもあります。
「循環棚卸」とは部分的、例えば今日は1番通路の商品のみ、明日は2番通路の商品のみというように場所や商品カテゴリーを絞って行う棚卸しのことです。
特定カテゴリー・特定範囲のみの棚卸という意味では、同じものですが行う目的が異なります。
- 自動発注の正確化のため
- 1度に棚卸を行うのではなく部分的に行っていく
なお特定商品のみの在庫を把握するために行う商品数のカウントを「スポットカウント」ということもあります。
サイクルカウントはきちんとした棚卸しなのでいつ・どの範囲で行うか事前に本社・本部などに申請・登録する必要性がありますが、スポットカウントは棚卸しそのものではないので、事前に申請・登録の必要はありません。
コンビニなどの24時間営業の店舗だと「循環棚卸」(サイクルカウント)という場合も多々あります。
なお循環棚卸の反対は店舗全部の商品の棚卸であって、「一斉棚卸」「全体棚卸」等、会社によって言い方が異なります。
棚卸しロスと逆ロス
帳簿在庫の金額よりも棚卸しで確定した在庫金額が少ない場合、ロスもしくは棚卸しロスと言います。
例えば、帳簿上は500万円なのに、実在庫は480万円しかなければ、棚卸しロスは20万円となります。
逆ロスは、その逆です。
帳簿上の金額は480万円なのに、棚卸しで確定した金額が500万円だと20万円の逆ロスとなります。
逆ロスが起きる理由はいろいろありますが、代表的なのは
- セール価格で仕入れたものが残り、通常価格に戻した時に伝票処理(値上げ処理)をしてない
- 歩留まりが思ったよりも多くなっている
- メーカーが間違って多めに納品していた
歩留まりが思ったよりも多いとは、例えばブリ等の大きな魚をそのまま仕入れてお店で切ってグラム単位で売る場合、捨てる部分(内蔵や骨)が4割と計算して6割を売る計算をしていたけど、実際に捨てる部分は3割しかなく、7割を売っていた時は、逆ロスになります。
これは切る人・調理する人の腕前が非常に良いと起こることが多いです。骨に身が残っている量が少なくなれば歩留まりはよくなるので。
メーカーが間違って多めに納品するなんてことあるの?と思うかもしれませんが、同じ会社AのB店に5ケース、C店に12ケースの配達をする場合、間違ってB店に6ケース、C店に11ケースを納品してしまうということは極稀に起こります。
この場合C店は1ケース分のロスが発生しますが、B店は1ケース分の逆ロスが発生します。
棚卸業務の実際
棚卸業務は実際、販売価格を確認した上で在庫金額を数えるという業務になっています。
今はハンディターミナルでスキャンしながら数えていくのですが、昔はすべて手書きで行っていました。
それを入力して合計金額を出すという途方もない作業でしたが、今は昔に比べれば楽になっています。
現在、大手スーパーやコンビニは自社では事前準備までで、実際のカウント(スキャンしながら数えていく作業)は、外注化しています。
イオンやイトーヨーカドー、ローソンやファミリーマート等は、エイジスという会社に委託をしています。
参考リンク:株式会社エイジス
小さなスーパーだと閉店後や休業日、臨時休業日に従業員総出で行うこともあります。
棚卸しの費用、エイジスの費用は細かいものはわかりませんが、契約でも異なってきますが、数えた点数プラス基本料金で決まります。
展示品の区分や在庫と非在庫の区分整理が必要
家電売場だと展示品がありますが、中には中身の無い外観だけのモックという場合もあります。
モックとはドコモやau等の携帯ショップに行けば置いてある、いわゆる商品のダミーです。
5色のカラーバリエーションのスマホなら本物の展示は1つで、残りはモックと呼ばれる中身の無い外観だけ分かれば良いダミーの展示品です。
また展示品はメーカーから貸し出されている場合もあります。
でも棚卸の外注業者はモックなのかメーカーからの貸出品なのか、そんなことは知りませんから、棚卸でカウントされる前にきちんと在庫(商品)なのか非在庫(商品では無い)なのか、区分を明確にしておかないと、間違えてカウントしてしまいます。
展示に飾りをすることもあります。クリスマスシーズンならクリスマスツリーを並べることもありますが、クリスマスツリーはただの飾りなのか、それとも商品なのか、棚卸外注業者は判断出来ないので、そういった飾りなのか商品なのかの区別もわかるようにしておきます。
棚卸の準備って本当にかなり大変なんですよ。
細かい商品仕分け
何も売場だけが棚卸の場所ではありません。バックルーム、いわゆる在庫置場も棚卸は行います。
家電や衣料品であれば、バックルームに予約注文して取りに来ていない商品があったり、お直し(寸法直し・ズボンの裾上げ等)した商品があります。
それらの商品は既に代金をいただいているのか、いただいてないのか、明確にしておかないといけません。
また家電製品であれば修理品を預かっていることもあるので、修理品なのかどうかの区分もきちんと行うことが必要です。
メーカー・販社に強制的に行わせていた棚卸
大きな駅前にあることが多い某大手◯◯カメラとつく家電量販店は過去に棚卸しで行政指導を受けた事もあります。
理由はメーカーに半強制的に夜中に行う棚卸しを無償で手伝わせていたため。
販売力のある店が、棚卸し手伝いに来て!と言われて行かないでいると
あ~、棚卸の応援に来てくれないなら、あなたのメーカーの商品はもう売らないようにしますね~
なんて事を言う事もあったらしく棚卸しの手伝いに行かないと売ってもらえないため、無償で手伝うしかない状況に。
さすがにこれはいけないと、行政指導が入った訳です。
実際に僕がパソコンショップで働いていた時、あるメーカーの営業さんがやけに棚卸しの日を聞いてくるものだから、なぜ棚卸しの日がそんなに気になるのか、聞いたら教えてくれました。
この営業さん、当然のように棚卸しを手伝いに来るつもりだったとか。
丁寧に棚卸は自社で行うのでお手伝いは不要ですと、お伝えしました。
なお棚卸しを手伝ってもらうことは必ずしも違法ではなく、営業活動の範囲内であれば合法です。
例えば、どうしてもこの商品を売ってください!管理はこちらでしますので!ということで仕入れた商品なら、店に置いてあるその会社のその分の商品のカウントくらいなら違法にはなりません。
または棚卸を手伝ってもらうというよりは、きちんとした報酬を出すことで作業をしてもらう契約をメーカーと行っている場合も違法にはなりません。
棚卸を行う時間と時期
棚卸を行う時間はいつごろで、時期はいつ頃が多いのかと言えば営業終了後の深夜で、時期は2月3月、8月9月が多くなっています。
棚卸は閉店後に行うのが一般的
営業時間中に棚卸を行うとカウントした後に売れてしまうとズレてしまうため、棚卸は閉店後、お客さんがいなくなった後に行うのが一般的です。
コンビニでは一部、深夜に短時間で行うこともありますが、スーパーになると閉店後から開店前までに行います。
夜遅くまで営業しているスーパーだと閉店後に棚卸しをしていたら間に合わないこともあるため、営業時間を繰り上げることがあるので
「棚卸につき20時に閉店させていただきます」
と案内を出している訳です。
決算前に行うことが多い棚卸
棚卸は会社の資産を明確にするために行うと書きましたが、資産を明確にして決算発表に備えるために行うためでもあります。
イオンやイトーヨーカドーは決算期前の1~2ヶ月前が多かったのですが、店舗数が増え、対応しきれないために、各店で時期をずらして行っています。
大手スーパーだと全国で何百店舗もあるので、毎月どこかの店舗で棚卸しが行われています。
小さいスーパーになると決算期の1ヶ月くらい前というところがまだまだ多くなっています。
決算期が多いのは2・3月/8・9月ということが多いです。
なおどこのスーパーもそうですが、非常に忙しい年末年始には行いません。またお盆の時期や連休シーズンにも行うことはほぼありません。
生鮮食品は毎月行うところも多い
商品の在庫金額が合わなくなるのは生鮮食品に多いため、生鮮食品のみ毎月棚卸しをしているスーパーマーケットもあります。
生鮮食品はスーパーマーケットにもよりますが水産・農産・畜産のことです。
イオンの場合はここにデリカ(お惣菜コーナー)が加わります。
ロスが多い売場も毎月行うことが多い
ロスとは帳簿上の在庫金額と実際の金額が合わないことです。帳簿在庫上は500万円の在庫があるのに、実際に棚卸しをしてみたら450万円しか在庫が無かったら、大変です。
でも実際にそういうことが起こることがあります。
例えば深夜に倉庫に忍び込まれてて商品を盗まれているけど、気が付かないなんてことがあるとロスになる訳です。
理由が明確にわかれば対策をすれば良いのですが、理由がわからない場合は理由を調べるためにも毎月棚卸しを行う売場もあります。食品・衣料・暮らしの品関係なくです。
棚卸の割引・棚卸セールを活用しよう
棚卸に関する割引や棚卸セールもあります。
棚卸の前の生鮮食品は割引幅が大きい
棚卸し前に生鮮食品を中心に安売りをするスーパーが多くあります。
理由は簡単です。棚卸しの日に廃棄しないといけない在庫が残ると棚卸しが面倒だからです。
生鮮品にはよく100円引きとか3割引き等の割引シールが貼られています。
あれはレジで割引になりますが棚卸のカウントは割り引いた価格で棚卸しをしないといけません。
だってその価格の価値しかその商品には無い訳ですから。
そうなると価格の変更を経理上の処理として行わないといけないため、面倒なんですよね。
だから無理やりにでも売ってしまいたい訳です。
棚卸しの日が近所のスーパーで解ったらその日の閉店間近に行くと翌日に売れない生鮮食品は半額のオンパレードなんて事もあったります。
結構狙い目です!
ただしイオンやイトーヨーカドー等の大手スーパーは最近は在庫を調整してあまり安売りをしないようになってきています。
小さなスーパーだと値下げシールで売り切ろうとしているところはまだまだありますよ。
棚卸の日付がわかったら、閉店間際にいってお得に買物をしましょう!
棚卸セールを行うところもある
棚卸しセールを開催しているところも結構ありますよね。
なぜ棚卸しセールを実施するのか?と言えば生鮮食品のように売りきらないといけないから・・という理由ではありません。
小さいお店なら資金を調達するために行うと考えるのが一般的です。
お店は商品を仕入れて、販売して初めて利益が出ます。
でも在庫のままにしておくと利益が出ません。
利益が出なければ新しい商品も仕入れることが出来ません。
しばらく売れてない商品を中心に値引きしてでも販売して現金化し、新しい売れる商品を仕入れて販売した方が長期的には利益に結びつくため、資金調達のために不振在庫を中心に棚卸セールを行います。
そのため棚卸セールは、食料品よりも衣料品・雑貨・暮らしの品(寝具・家具・食器等)で行うことが多くなっています。
食料品は元々、商品回転率が早いので、棚卸しセールを行う理由があまりありません。
棚卸セールはいわゆる売れない在庫の処分市・処分セールなので、非常にお得です。
以上、イオン等のスーパーマーケットで行われる棚卸はどうして行われるのか?についてでした。
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